● ERC20ステーブルコイン減少は資金流出ではなく、チェーン間移動と待機流動性の増加を示唆。
● SSR低下(12.57)は、流動性がBTCから逃げず、次の参入機会を待つ局面を示す構造シグナル。
● 現物主導のリスク選好は弱いが、暗号資産市場全体の流動性は維持されている。
2026年1月28日、エックスウィンリサーチでは「ステーブルコインが減る局面は『押し目待ち』か『市場離脱』か」というテーマのもと、ERC20ステーブルコインの総供給と取引所残高が同時に減少している点を取り上げた。短期的には買い戻し余力が低下し、需給面では逆風となり得る一方で、拙速に結論づけるべきではないと指摘した。
その後、追加データを重ねて検証すると、ステーブルコイン減少には複数の解釈が存在することが、より明確になってきている。
まず注目すべき指標として、CryptoQuantのアナリスト、カルメロ・アレマン氏は、ステーブルコイン供給比率(Stablecoin Supply Ratio:SSR)を挙げている。SSRは、ステーブルコインが持つ購買力をビットコインと相対的に比較する指標であり、資金がすでにBTCへ投入されているのか、それとも待機しているのかを示す構造的なデータだ。現在のSSRは12.4と、2025年10月に記録した過去最高水準の16〜17台から大きく低下している。
この低下は、流動性が市場から消失したことを意味するものではない。むしろ「すでに投入されていた状態」から「再び待機状態」へと移行したことを示唆している。
この点は、「ビットコインの売却資金が金価格高騰の原資になっている」という見方とも整合しない。大口資金は、株式、貴金属、デジタル資産、ステーブルコインを組み合わせたマルチアセット分散を行っており、SSRの低下は、流動性が暗号資産エコシステムの外へ流出したのではなく、内部に留まっている可能性を示している。
さらに重要なのが、CryptoQuantのアナリスト、テディビジョン氏が指摘するチェーン間での流動性移動だ。2026年1月19日から20日にかけて、Tron上のUSDT(TRC20)は1日で約10億USDT増加した。一方、Ethereum上ではUSDT(ERC20)が約30億ドル、USDC(ERC20)が約35.5億ドル減少し、合計で約65億ドル相当のステーブルコインが減っている。
ERC20の減少直後にTRC20が増加している点は、流動性が市場から「退出」したのではなく、別のレールへ「移動」した可能性を強く示唆する。 USDTはデリバティブ取引やOTC決済、戦術的な流動性として使われやすく、手数料の安いネットワークへ移動しやすい特性を持つ。一方、USDCは現物取引やオンチェーン決済との結びつきが強く、現物需要の代理指標としての性質が強い。Ethereum上でUSDTとUSDCが同時に減少する局面は、現物主導のリスク選好が弱まり、防御的なポジショニングが優勢になっていることを示している。
整理すると、ERC20ステーブルコイン供給の減少は、Ethereum上のオンチェーン活動に対しては弱気であり、現物主導の上昇余地についても中立からやや弱気の評価となる。一方で、暗号資産市場全体から資金が流出していることを示す証拠ではない。
流動性は依然として暗号資産圏内に存在し、チェーンや用途というレールを変えながら、次の機会を待っている状態と捉えるのが妥当だろう。
結論として重要なのは、「ステーブルコインが減ったかどうか」ではなく、「それがどこにあるのか」である。今後は、ステーブルコイン供給の下げ止まり、取引所フローの質、そしてチェーン横断での流動性の所在を継続的に確認することが、次の方向性を見極めるうえでの鍵となる。
オンチェーン指標の見方
Stablecoin Supply Ratio(SSR):ステーブルコインの購買力をビットコイン価格と相対比較し、市場にどれだけ「待機資金」があるかを測る指標です。SSRが低いほど、未投入の流動性が多く、将来的な買い圧力の余地が大きい状態を示します。一方でSSRが高い局面は、流動性がすでにBTCに投入され、上値余地が限定されやすい局面と解釈されます。
デジタル通貨カンファレンス
登録無料
✉️ 今すぐ申し込む


