暗号資産(仮想通貨)取引所Coinbase(コインベース)は、予測市場の提供を米国の全ユーザーに拡大した。
これにより、米国50州すべての利用者が、選挙、スポーツ、エンターテインメント、カルチャー、経済指標といった現実世界の出来事の結果に基づく取引を行えるようになった。今回の全米展開は、限定的な提供から一歩進み、予測市場をコインベースの主力機能の一つとして位置づける動きといえる。
このプラットフォームは、米国で規制を受ける予測市場運営会社Kalshi(カルシ)とのパートナーシップのもとで開発された。
カルシは、イベントの結果に対して「はい」または「いいえ」の契約を売買する仕組みを提供しており、各契約の価格は市場参加者が見込む確率を反映する。価格が上がるほど、その結果が起こると考える参加者が多いことを示す形だ。こうした契約は、簡略化されたデリバティブのように機能する。
コインベースは昨年12月に予測市場の導入を発表し、先月から段階的に提供を開始していた。今回の拡大により、全米での利用が正式に可能となった。初期段階では、取引の流動性や注文フローはすべてカルシから提供され、今後数カ月で他の予測市場プラットフォームの契約にも対応する計画だという。
利用者は、予測市場のポジションを、既存の暗号資産、株式、現金残高と並べて同一のインターフェース上で管理できる。最小取引額は1ドル相当からとされ、米ドルまたはUSDコイン(USDC)での取引に対応する。これにより、予測市場は一部の専門家向け商品ではなく、一般ユーザーにも手が届く形で提供される。
予測市場はここ1年で急速に注目を集めてきた分野だ。Polymarket(ポリマーケット)やカルシといった主要プラットフォームでは取引量が大きく伸び、参加者が政治や経済に対する見方を金融商品として表現する場として存在感を増している。これらの市場は、リアルタイムの世論や確率を測る指標としても使われ、一部の投資家は代替データの一種として注目している。
コインベースの参入は、こうした市場に可視性と流動性の両面で追い風となる可能性がある。既に規制下で運営され、多数のユーザーを抱えるプラットフォームを通じて提供されることで、予測市場はより幅広い層に届く。特に、スポーツの大型イベントであるスーパーボウルの時期に合わせた提供開始は、一般ユーザーの関心を引きやすいタイミングといえる。
この分野への関心は暗号資産業界に限らない。従来型の金融機関やフィンテック企業も相次いで参入している。
CMEグループはFanDuelとの提携を通じて予測市場を展開し、Robinhood(ロビンフッド)やWebull(ウィブル)も新たな商品カテゴリーとして追加した。さらに、ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)もこの分野への参入を検討しているとされる。
コインベースにとって、予測市場は単独の新機能ではなく、より大きな戦略の一部だ。同社は以前から、自社を暗号資産取引所にとどまらない「エブリシング・エクスチェンジ」に進化させる意向を示してきた。株式、デリバティブ、ステーブルコイン、決済、トークン化資産、オンチェーン商品などを一体で提供し、ユーザーをプラットフォーム内にとどめる狙いがある。
その流れの中で、コインベースは先月、The Clearing Companyの買収を発表した。同社は、ポリマーケットとカルシの双方で成長戦略を担ったToni Gemayel(トニ・ジェマイエル)氏が創業した企業で、予測市場の拡張を加速させるための布石と位置づけられている。
|文・編集:Shoko Galaviz
|画像:Shutterstock
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