米家電量販大手のベストバイが、タンジェムの暗号資産ハードウェアウォレットを全米200店舗以上で販売開始した。スイス企業のコールドウォレット製品が、これほどの規模で一般の家電量販店に並ぶのは初めて。
これはタンジェムにとって米国最大級の小売展開で、ウォルマートやアマゾンでの販売実績に加わるもの。暗号資産を取引所から自己保管へ移す利用者が増える中、今回の販売拡大となった。
ハードウェアウォレットはプライベートキーをオフラインで保管し、取引所やインターネット接続アプリから遮断する。顧客資金流出が相次ぐ中、自己保管の重要性を認識したユーザーに人気を集めている。
チェイナリシスによると、2025年の暗号資産の盗難被害額は34億ドルに達した。特にバイビットの15億ドル流出は、業界史上最大の単独ハッキング事件となった。被害総額は前年を上回り、取引所の資金管理体制への監視が強まっている。
個人も標的となり、昨年だけで約15万8000の個人ウォレットが侵害された。プラットフォームの規制強化や本人確認の徹底を背景に、自己管理型の鍵を選ぶ利用者が増えている。
モルドール・インテリジェンスのアナリストは、ハードウェアウォレット市場は2031年に22億5000万ドルへ拡大すると予測する。2026年の市場規模は7億2000万ドル程度で、大半は一般消費者による購入が牽引。市場拡大を受け、 最良のハードウェアウォレットをめぐる棚争いも過熱する。
ベストバイの売り場にはタンジェムの2製品が並ぶ。1つはクレジットカードサイズのNFCカード型、もう1つはセラミック製ウェアラブルのTangem Ring。
いずれもプライベートキーを端末内のセキュアチップで管理し、サーバーやスマートフォンには保存しない。タンジェムは書面のリカバリーフレーズの代わりにバックアップカード方式を採用するが、ユーザーがリカバリーフレーズを取り込むこともできる。
この動きはタンジェムだけにとどまらない。トレザーは 初心者にもわかりやすい自己保管製品を展開し、ブロック(Block Inc.)も独自の ビットコイン自己保管ウォレットを広く市場展開する。大手量販店での販売拡大が、カジュアルな購買層を自己保管ユーザーに転換できるか、業界は次の動向を注視する。


